第061号 誇りを持つ

 先日あるテレビで過疎化の進む地域について番組を組んでい
ました。その町では、工場の閉鎖が相次ぎ、若者はどんどん都
会に出て行ってしまうなど、活気がまるで感じられない状況で
した。「この町を何とかしたい、という意見も最近では減って
きた…。」と話す町民の沈んだ表情が最後に映し出されていま
した。
 番組を見た後、以前訪問した宮崎県綾町のことを考えました。
綾町はこのメルマガで何度もご紹介しましたように、かつては、
住民が一人また一人と家を出て行く「夜逃げの町」とまで言わ
れていましたが、前町長を中心に自然保護を初めとしたまちお
こしを展開し、今では年間100万人以上の観光客が訪れる九
州でも有数の観光地にまで発展した町です。
 前町長のお孫さんに町内を案内してもらった際、何やら町内
の若者が多いことに気づき、「都会に出て行く人は少ないんで
すか?」と訊ねたところ、「学校を卒業したら、みんな一度は
就職のため都会に出て行くけど、2~3年したらやっぱり地元
がいいと言って、戻ってくるんですよ。だいたい9割の人間が
戻ってきますね。」という返事が返ってきました。
「ここで作ってる野菜は、どこよりも栄養豊富です。もっとた
くさんの人に食べてもらうために、良い方法を今考えていると
ころです。」
「ここの水は日本名水百選に選ばれるほど。栄養豊富な野菜と
おいしい水をもっとアピールして、豊かな町だということを今
以上に訴えたい。」
 ちょっと話をしただけで、彼らから、随分前向きな意見がた
くさん出てきました。
「週末の飲み屋でまちの未来について、皆で語り合うこともし
ばしばです。みんな自分のまちに誇りを持っているんです。」
というセリフが非常に印象的でした。
 住民が自分のまちに誇りを持つ。まちに誇りが持てれば、綾
町のように様々なアイデアが飛び交い、町自体が活性化してい
きます。
誇りというと大げさに聞こえるかもしれませんが、「おいしい
野菜」、「おいしいお水」といった些細なことでも十分誇り持
つに値することは綾町が証明しています。
現在、日本の様々な地域がまちおこしに取り組んでいますが、
行動を起こす根源の部分に、「自分のまちは素晴らしい。」と、
周囲に自慢できる気持ちを持つことが、とても重要だと感じま
した。
 冒頭で書いた活気のなくなっている地域も、自分のまちにつ
いて何か自慢したい事、訴えたい事を、些細なことでも見出す
ことができれば、きっとそこがまちおこしの第一歩になるに違
いない、とあらためて考えさせられました。(小林)
◆綾町役場ホームページ
 ⇒ http://www.town.aya.miyazaki.jp/ayatown/index.html

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