第041号 流通主導権

●流通主導権
 以前石川県の珠洲市(能登半島の先端)というところで、地元産椎茸のブラ
ンドづくりと販路開拓のお手伝いをしたことがあります。
 能登半島の厳しい気候に育まれ、原木栽培で丁寧に育てられたこの椎茸は、
非常に品質の優れたものだったのですが、近年は安い中国産の椎茸に押され、
取引量も取引価格も下落傾向にあるとのことでした。
 その時点で大半の珠洲産椎茸は農協に出荷されており、他地域のものと混ぜ
て選別され、流通しているということでした。
 まず、最初に取り組んだのは、その珠洲産原木乾し椎茸の長所を徹底的に棚
卸しすることです。生産者サイドでいくら品質が良いと思っていても、それが
消費者に価値として伝わっていなければ何の意味も持ちません。
 味や栄養価はどうなのか、他地域の椎茸とはどう違うのか、何故品質が良い
のか、今までどのように評価されてきたのか…。こういったことを話し合って
いくと、意外と関係者の認識もまちまちで、お互いに知らなかったことも明ら
かになってきます。
 そのようにしてようやく、珠洲産原木乾し椎茸の「良さ」というものが客観
的にわかるようになってきました。次はその良さが消費者に的確に伝わるよう
なネーミング、商品説明、価格設定、パッケージ…等などの見直しをします。
 そして仕上げは、新しいブランドとして生まれ変わった商品の販路開拓です。
大量の出荷を効率的に流通させる農協ルートでは、他地域のものと区別されな
くなってしまうため、新たに独自の販路を開拓しなければなりません。
 過去の取引状況を見ると、取引量は少ないながらも、地元の観光施設の売店
など、いくつか有望な販路がありました。まずは「できることから」というこ
とで、そういった販路をひとつずつ開拓していくと、「よく売れるよ」という
声がぼちぼちと入り始めました。
 「販路開拓における主導権というのは、流通主導権、すなわち価格決定権と
取引条件決定権のことで、この主導権がないと、取り扱い商品や一番商品がい
くらあっても利益にはならない。」これは有名なマーケティングの基本原理の
ひとつです。
 珠洲産乾し椎茸あらため「海と森の椎茸」は、流通主導権を持つべく新しい
ブランドとして産声を上げたばかりですが、これからの発展を見守りたいと思
います。 (望月 義尚)
 ◆お問い合わせは 珠洲市森林組合
  927-1215 石川県珠洲市飯田町7-129
  TEL:0768-82-0674 FAX:0768-82-6194
  ⇒ http://www9.ocn.ne.jp/~suzumori/

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