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第098号 赤字施設の存在意義

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　　　第98号　発　行：株式会社船井総合研究所
　　　　　　　事務局：TEL 03-5434-7656　小林 祐司
　　　　　　　E-mail：info@machiokoshi.net
──────────────────── 1,720部発行───
■ 赤字施設の存在意義
　いま、ある地域で経営再建途上の大型レジャー施設のお手伝い
をしています。この施設は過去大きな運営赤字を出して会社更生
法の適用となり、マスコミからは赤字レジャー施設の代名詞のよ
うに言われています。
地元の人たちのこの施設に対する評価も厳しいもので、その存続
に対しても疑問の声が聞こえてくるような状況にあります。
しかし、この施設の過去のデータを冷静に見ていくと、年間何十
万人という入場者のうち、なんと９割以上が県外からの入込みで
した。かなり遠方から、たくさんの観光客を集客していたのです。
　県外客が何十万人も訪れていれば、当然レジャーそのものだけ
でなく、宿泊や飲食、土産などの観光マーケットが存在しており、
その集客核としての経済効果は軽く見ても数百億円規模であった
ものと想像できます。この施設の運営自体は赤字経営となってい
ましたが、地域としては大変な経済効果を享受していたのです。
　しかし「赤字３セク」「税金の無駄づかい」という論調ばかり
が取り沙汰される中で、この施設の集客力による経済効果は理解
されず、追加投資もなくコスト削減をするのみとなり、とうとう
閉鎖寸前のところまで追い込まれてしまったのです。
　そもそも、この施設を開発した目的は何だったのでしょうか。
おそらくは「地域活性化」であったことと思います。さらに言え
ば観光振興、地場産業育成、雇用創出…といった目的があったこ
とでしょう。
だとしたら、もともと施設単体での運営黒字を出すことだけが事
業目的ではなかったはずです。運営努力によって赤字を出さない
ようにするのは当然ですが、むしろ本来の目的である「地域活性
化」に対してどのように効果が出ているかを、きちんと評価する
ことが重要だったのではないでしょうか。
　もしもこの施設の存在意義が正しく評価され、地元がその存在
を誇りに思い、応援しようとする機運が強かったなら、この施設
はもっと違う運命をたどっていたのではないかと思えてならない
のです。
　これからこの施設がどうなっていくのか、はっきりするのはこ
れからですが、もし、再建に成功する時が来るとすれば、それは
今度こそ、地域への貢献が正しく理解され、地元が一丸となって
応援してくれるようになった時なのかも知れません。
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○今回の執筆者紹介　望月 義尚（もちづき よしひさ）
東京第二経営支援本部チームリーダー。
飲食店や小売店、温浴施設などの開業支援では、斬新なコンセプ
トづくりと緻密な事業計画で数々の超繁盛店を開発している。
また売上アップ支援、全国各地の地域振興などで幅広く活躍し成
果を上げている。商工会や地方自治体等での講演実績も数多い。
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