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普段当たり前に享受しているものが、なにかのアクシデントで突然失われた 時、その存在の重要性に気づかされることがあります。今回は神戸市長田区に あるコミュニティラジオ局「FMわぃわぃ」を取り上げます。 勘の鋭い方はすでにお気づきかと思いますが、神戸市長田区は95年に起き た阪神・淡路大震災による火災で、甚大な被害を被った地域です。またアジア を中心とした海外28カ国の人達が暮らす、さまざまな文化が混じり合う地域 でもあります。「FMわぃわぃ」はその震災を契機に開局されたミニFM局で す。 災害発生から時間が経過し、不自由ながらも着る物・食べる物が充足する頃 になり、次に被災者にとって必要とされるもの、それは「情報」です。震災直 後、現地で必要とされていたのは、自分たちが生きていくための、いわゆる生 活情報と呼ばれる身近な情報でした。日本人でさえ生活情報を得ることが大変 な状況の中で、言葉の壁を持つ異国言語の人達がどれほど困難な状況であった かは、想像にたやすいことです。 震災発生後2週間にしていち早く3カ国語でラジオ放送をはじめた「FMヨ ボセヨ」、ボランティア基地となっていたカトリック鷹取教会内で開局された 「FMユーメン」。必要な情報 を得られず不安と焦燥にかられた中で、ラジオ から流れる母国語の言葉や音楽は、どれだけ被災者の心を癒し勇気づけたこと でしょうか。この2つの局が核となり統合する形で、95年7月に「FMわぃ わぃ」が設立されます。 現在は(株)エフエムわいわいとして中国・韓国朝鮮・ベトナム・タガログ・ 英・スペイン・ポルトガル・日本語の8カ国の言語で放送されています。震災 という不幸な出来事を契機に、生活情報を送るメディアとして誕生したミニ FM放送局は、まちに暮らしている多様な人々をつなぐ新しいメディアとして 着実に根付いています。「多文化共生と人間らしいまちづくり」を目標に掲げ、 FMわぃわぃは今日も途切れることなく放送されています。 (増島 清人)
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