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■ 意欲と知恵 こんにちは。小林です。春一番の風が吹いて以来、だいぶ暖か くなりましたが、みなさんのまちはどうでしょうか?暖かくなる と体が少し活動的になる気がするのは、私だけでしょうか?何だ か春のエネルギーみたいなものを体が吸収しているのですかねぇ。 さて、まちおこしにも様々な人達のエネルギーが欠かせないで すし、そこには、当然若者やお年寄りの方の力も必要になります。 みなさんのまちはどうでしょうか?もう10年も前の話しで、以 前私が勤めていた会社の、若い社員とベテラン社員のちょっとい い話があるので紹介させてください。 若い社員は、その時はまだ学生を出て1年くらいでしたが、業 務の中で、どうも言いたいことをうまく相手に伝えられず、上司 に「言いたい事、やりたい事があるなら、どんどん周りに伝えて 実行すればいい。だまっていたら何を考えているか分からないだ ろ。」などと、いつもどやされていました。 彼には、仕事で様々なことを経験し、将来は自分の故郷のまちお こしをしたいという夢がありました。しかしどうすれば良い経験 できるか、経験をまちおこしにどう活かせるかが、さっぱりわか らないまま年月だけがすぎ、そのうちみるみる元気をなくしてい きました。 その職場には、定年間近のとても温和なある社員がいて、落ち 込んでいく彼を見かねて、ある日「何も考えずに半年間だけ私と 精一杯仕事に打ち込んでみないか。」と言いました。それをきっ かけに若い彼と、定年間近のベテラン社員二人だけのちょっと変 わったコンビがひとつの仕事を共に行うことになりました。 その間、温和だったはずのベテラン社員は、人が変わったよう に厳しく彼を指導し、周囲もその変わりように驚くほどでしたが、 彼もよくそれに耐え、歯を食いしばりながら仕事を進めました。 時は流れて、10年たった今、その時の若い社員は、自分なり のまちおこしの方法を見出し、来年にも故郷にもどって、意気揚 揚と新しいビジネスを始めようとしているところです。 彼に、ベテラン社員とのことを聞くと、決まって「あの半年間の 仕事がなければ、今の自分は絶対にない。」という言葉が返って きます。 一体どんなやりとりがあったのかと尋ねると、「とにかく厳しか った。毎日ケチョンケチョンに言いまくられ、何を言い返しても、 いつもそれを上回る知識と理屈でたたみ返されて、まるで出口の 見えないトンネルの中で仕事をしているようだった。ただ、それ が苦痛とは感じなかった。理由は、本音をぶつけ合うことで、そ の方のレベルの高さや仕事に対する真摯な考え方を感じながら仕 事を進める事が出来ていたせいだと思う。」と言うのです。 また、今は退職しているベテラン社員のほうも、「若い彼をサ ポートする事が、たまらなくうれしかった。あの頃のことを思い 出すと今でも胸がトキメクようだ。」とまで言っています。 知識や経験のある年配者が、意欲やエネルギーはあっても想い を実現する術を知らない若者を鍛えることで、互いに信頼を高め るとともにやりがいを感じ、その後の互いの人生にまでよい影響 を及ぼす。そんな関係って、まちおこしにも絶対必要だと思いま した。 まちおこしも誰か一人の力で、全てがうまくいくなんて事はな く、成功のためには、必ずたくさんの人が関わり、力を合わせる ことがが必要です。 みなさんのまちでは、若者の意欲と年寄りの知恵。この素晴ら しいプラス要因をうまく結びつけることはできていますか?若者 が全くいないということはないでしょうし、年配の方も数多くい るはずです。「意欲と知恵」という、異なる世代のもつ特長を組 み合わせれば、まちにすごいパワーが生まれるのだと思います。 ——————————————————– ○今回の執筆者紹介 小林 祐司(こばやし ゆうじ) 某建設コンサルタント会社にて地質調査を担当していたが、 調査中に環境問題意識に目覚めて退職し、インドに渡る。 インドではNGOのボランティア活動を通じて食糧問題へ の関心が高まり、帰国後生協に入社、地域密着の生協活動を 担当。 その後退職して船井総研入社。現在週刊まちおこし編集長。
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