第084号 コストについて考える

■ コストについて考える
 相変わらず世の中では「リストラ」「コストカット」といった
言葉がよく使われています。
 無駄な支出を抑えて収益性を確保するというのは大切なことで
すが、コスト削減の話しになった時に私ども船井総研のコンサル
タントが現場でよく使う言葉があります。それは『表のハイコス
ト、裏のローコスト』です。
この意味は、『お客様に接する部分や見えるところにはしっかり
費用をかけて最大限の顧客満足を追求しつつ、見えない部分、顧
客満足に関係ない部分では思い切り無駄を排除してローコスト経
営を心がけよう』ということです。
こうして書くと、ごく自然で当たり前の考え方のようですが、多
くの経営の現場では、このことが徹底できていない、それどころ
か逆のことをやっているケースも少なくないのです。
 経営不振に陥った観光・レジャー施設を診断させていただくと、
よく出会うのが「過剰なコストカット」です。利益率を改善しよ
うとするあまり、必要なコストや顧客満足に直結するはずの費用
まで削ってしまうのです。先日経営診断をしたあるレジャー施設
の事例では、かなり過激なコスト削減をして、営業支出はピーク
時と比べてなんと2割以下にまで下げていました。
 なぜそこまで削ってしまうのでしょうか。それは『コスト削減
は計算ができるから』なのです。確かに人員を減らせば人件費が
下がりますし、設備の稼働をストップすれば水光熱費が下がりま
す。やったことに対して、その効果をきちんと計算できるのがコ
ストカットなのです。計算して数値で結果を示せれば、周りの理
解も得やすく、意志決定まで円滑に進みます。
ではコストをカットした結果、計算通りに利益が出るようになる
かというと、現実は全くそうではないのです。設備投資をはじめ、
人的サービスや広告宣伝活動など、前向きな攻めのコストをかけ
なくなると、当然のことながら売上がどんどん下がってしまうの
です。
コストにはどうしても削れない固定費というものがありますから、
売上規模が小さくなると利益率も悪化します。利益率を改善しよ
うとしてコストをカットしたはずなのに、かえって利益率や利益
の絶対額が減ってしまうのです。
もちろん、誰もいないところの照明がついていたり、水漏れして
いるなどの無駄なコストは論外ですが、経営改善の答えをコスト
削減だけに求めてしまうと、決してうまくいきません。
 ここまで読んで、『攻めのコストが必要なことも、顧客満足が
大切なこともわかっているけど、結果が見えないことに対しては
なかなかコストをかけられない。各方面の理解が得られない…』
とお考えの方が多いかも知れません。
でもそれを意思決定することこそが経営なのです。そこで間違っ
た意思決定をしないために、少しでも判断の精度を高めるために、
経営診断をしたり、市場調査をして客観的な判断材料を集めるの
です。
将来を100%見通せるなんてことはあり得ません。だからと言
って意思決定から逃げていては経営にならないし、ヤマ勘だけで
いつまでもうまく行くはずもありません。組織の事情などで意志
決定が円滑にいかないならなおさらです。
『表のハイコスト、裏のローコスト』を常に念頭に置きながら、
コストのかけどころ、削りどころを上手に意思決定していければ、
事業は健全に存続し、地域にさまざまな貢献をしてくれるはずな
のです。(望月)
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○今回の執筆者紹介 望月 義尚(もちづき よしひさ)
東京第二経営支援本部チームリーダー。
飲食店や小売店、温浴施設などの開業支援では、斬新なコンセプ
トづくりと緻密な事業計画で数々の超繁盛店を開発している。
また売上アップ支援、全国各地の地域振興などで幅広く活躍し成
果を上げている。商工会や地方自治体等での講演実績も数多い。

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