第029号 人を結びつける地域通貨

 最近では、地域コミュニティーを活性化する手法として全国各地で地域通貨
(エコマネー)が導入されています。通貨のやりとりをコミュニティーの活性
化に役立てようという考え方です。本来の通貨と大きく異なる点は、使用でき
る地域が限定されることと、貯蓄する機能(利子を付ける等)を取り除き、通
貨の流通を促進させることを目的としている点です。
 地域通貨を導入することの大きな効果は、1)通貨が流通するエリアを特定
することで、地域内の交流頻度・密接度を高められること、2)ボランティア
等に代表される、あいまいな存在である無形の地域サービスを、有形の通貨と
いう形に変換することで定着化・安定化させる働きがあることです。通貨の呼
び方も地域によって様々であり、すでに全国で40余りの地域通貨の存在が確
認できます。今回紹介する「COMO(コモ)」も地域通貨の一つです。
 「COMO」とは東京西部に位置する多摩市を中心とした住宅街「多摩ニュー
タウン」で採用されている地域通貨です。試験期間から含めてすでに3年余り
の運用実績を持つ「COMO」は、多摩ニュータウンが抱える以下のような事
情背景から生まれたものです。
 高度成長期の70年代に新興住宅街として建設されたこの地域は、成長期こ
そ若い入居者に恵まれましたが、その後の少子化や核家族化により、町の高齢
化が急激に進行したエリアです。私は学生時代をこの多摩ニュータウンで過ご
しましたが、町全体の高齢化は、ショッピングセンターの閉店や、公立学校の
閉鎖など、さまざまな形で目の前に現れました。このような状況下では、生活
力の弱い高齢者だけが取り残され、結果として町そのものが活力を失いゴース
トタウン化しかねません。そこでお互いに支え合うことのできる地域コミュニ
ティの仕組みづくりとして始められたのが地域通貨「COMO」の取り組みで
した。
 この多摩ニュータウンの事例に限らず、他の地域では商店街のポイントカー
ドと連携させるなど、あらゆる試みが全国で試されています。今後も、まちお
こしの新たな手法の一つとして考えていきたいと思います。
(増島 清人)

地方創生セミナーのご案内

コンサルタントコラム

ページのトップへ戻る