第028号 地域ブランドをつくりあげた町

 熊本県菊池郡七城町。人口は約6100人で、メロンと米を中心とした小さ
な農業の町です。七城町の特産品センター「七城メロンドーム」には町の農家
616戸のうちほぼ半数が出荷しており、とれたての農産物には生産者の名札
をつけ、対面販売を行っています。メロンや米など「七城」の名前を冠した農
産物が人気です。
 メロンドームは、オープンした平成七年度の売上3億9千万円から現在売上
を三倍にまで伸ばし、利益から町に還元される寄付金は、すべて、借金である
地方債の返済を進めるための減債基金に繰り入れられました。
 メロンドームと並ぶもうひとつの目玉の「温泉ドーム」も、年間50万人前
後の入湯客があり、平成八年のオープン以来、町への寄付金は億単位に達して
います。
 「第三セクターは収益性だけが目的ではないのだから、利益は出すべきでは
ない。しかし赤字も困るので収支はトントンが良い。」…などといっている地
域が多い中で、この七城町のサクセスストーリーは、『平成の奇跡』とも言わ
れ、全国からの視察も増えています。
 七城町の最大の成功要因は、間違いなく町長その人でしょう。私どもが緒方
町長にはじめてお会いした時に聞いたのは、「朝役場に出勤する前に、メロン
ドームに寄って現場に細かい指示を与えている。」「夕方になると温泉ドーム
に電話をして、その日の来客数を確認している。」といったお話でした。二度
目にお会いした時、町長はメロンドームで自ら商品の陳列を直されていました。
 成功要因は分析する角度によって、いろいろな理由をあげることができます
が、七城町の活性化は、『トップ自らが率先して現場に立つことで、地域がひ
とつの目的に向かって一体化した』ことが最大の成功要因に他ならないと、緒
方町長にお会いして痛感させられました。
(望月 義尚)

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