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先々週、第10号は「素朴な露天風呂にこだわって」ということで熊本県南 小国町の黒川温泉郷をご紹介しました。今週は黒川温泉が年間100万人以上 の人々が訪れる一大観光拠点となるに至った2つめの成功の要因を書きたいと 思います。 黒川温泉で働く若い人たちは、自分達の温泉をどうアピールするかについて 話し合いました。そこで出てきた考えは、お客様が温泉に行こうと思い立った ときは「黒川温泉の○×旅館にいこう。」といった旅館名を思い浮かべるので はなく、「黒川温泉に行こう。」というように地域全体をイメージするのではな いか、というものでした。そして旅館名ではなく温泉郷全体をアピールしよう という事になったのです。そこで、今までは看板で競って自分達の旅館をアピー ルしていたところを、全て温泉名だけの看板に統一したことと、有名になった 「入湯手形」の導入に至りました。入湯手形とは、その手形を一枚購入すれば、 3つまで温泉郷内のどの旅館のお風呂にも入れるというものです。これらの工 夫は、ピタリとお客様の心を捉え、手形は年間13万枚以上の売上枚数となり ました。 ここで注目すべき事は、温泉郷の人々が、ひとりひとりの利益を追求するの ではなく、仲間として協力し、黒川温泉を日本一の温泉にするんだ、という同 じ目標にむかって一体化したことです。そうでなければ、入湯手形や黒川温泉 の名前に統一したポスターといったアイデアが実行されることは、ありえない と思うのです。 温泉郷の中の人々が仲間として一体化し、一緒になって町を盛り上げていく。 聞けばそうかと思えても、実現にはかなりの苦労があったと思われます。黒川 温泉郷の人々はそれらを乗り越えたからこそ、現在の成功があるのだと思います。 (小林 祐司)
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