第012号 共通の目標

 先々週、第10号は「素朴な露天風呂にこだわって」ということで熊本県南
小国町の黒川温泉郷をご紹介しました。今週は黒川温泉が年間100万人以上
の人々が訪れる一大観光拠点となるに至った2つめの成功の要因を書きたいと
思います。
 黒川温泉で働く若い人たちは、自分達の温泉をどうアピールするかについて
話し合いました。そこで出てきた考えは、お客様が温泉に行こうと思い立った
ときは「黒川温泉の○×旅館にいこう。」といった旅館名を思い浮かべるので
はなく、「黒川温泉に行こう。」というように地域全体をイメージするのではな
いか、というものでした。そして旅館名ではなく温泉郷全体をアピールしよう
という事になったのです。そこで、今までは看板で競って自分達の旅館をアピー
ルしていたところを、全て温泉名だけの看板に統一したことと、有名になった
「入湯手形」の導入に至りました。入湯手形とは、その手形を一枚購入すれば、
3つまで温泉郷内のどの旅館のお風呂にも入れるというものです。これらの工
夫は、ピタリとお客様の心を捉え、手形は年間13万枚以上の売上枚数となり
ました。
 ここで注目すべき事は、温泉郷の人々が、ひとりひとりの利益を追求するの
ではなく、仲間として協力し、黒川温泉を日本一の温泉にするんだ、という同
じ目標にむかって一体化したことです。そうでなければ、入湯手形や黒川温泉
の名前に統一したポスターといったアイデアが実行されることは、ありえない
と思うのです。
 温泉郷の中の人々が仲間として一体化し、一緒になって町を盛り上げていく。
聞けばそうかと思えても、実現にはかなりの苦労があったと思われます。黒川
温泉郷の人々はそれらを乗り越えたからこそ、現在の成功があるのだと思います。
(小林 祐司)

地方創生セミナーのご案内

コンサルタントコラム

ページのトップへ戻る